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脱活乾漆法

鎌倉時代の仏師の気迫に触れて来た。

九州国立博物館 京都大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ(2019年4月23日~6月16日)

門外漢なる故、仏像の制作技法には疎く、調べると驚く事ばかりだったが、木彫寄木造り(鎌倉)以前の飛鳥、天平像は溶かした青銅を型に流し込む鋳造像、奈良時代には漆と木粉を練り合わせものを塗り固め盛り上げ造形を施していく脱活乾漆法が主流で、鎌倉以後は漆が高価であった事もあり木彫の寄木造が巨像制作や分担分業も可能な事から世に広まっていったらしい。技法の難易度では逆の歴史を辿った様にも見えて面白い。有名な阿修羅像(興福寺国宝館)も脱活乾漆法で造られ、非常に個性豊かで仏師の自由意志が乗り移ったかの様な佇まいは生身の人間の様で圧巻なのだが、それを可能にしたのが漆を自在に操れたこの技法なのかもしれないと思うと仏像の歴史の中で造り手の思想も技法と共に変質していったという事なのか。鎌倉以後は時の権力とのせめぎ合いの中で民衆信仰の対象であり続ける様式美(イコン化)が開花していく。

仏教伝来の最初の仏師魂は技巧の中に潜んでいると勝手に想像してしまった。

 
 
 

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