メゾチント雑考Ⅵ
- ミキ ヤストシ

- 2019年5月29日
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メゾチントは目立て作業がなければ成り立たない。その労力たるや尋常ではない。しかも均一の目地(刻目)を人力で施すのは熟練技術と並外れた根気が必要で非常に厄介な作業。目地粒子の緻密さが階調の豊かさ深さを決定づけるとなれば尚の事、極めて重要な手仕事作業。しかも削りに失敗すれば修復は難しい。メゾチントは当初、油彩画の複製や書物の挿絵などに使用され写真の様な表現が出来てしまうので、より緻密さを追求していったのは必然ではある。技術は後から付いて来る、と言っても私などはとても到達できない世界で、なんとか使える情けないレベルです。半世紀前からこの作業を機械にやらせようと電動下地製版機を開発されている版画研究室(家)もあり、版全体に均質の孔が砂目状に穿たれ、かなりの完成度を誇るらしい。だが無い物ねだりなので人力で頑張るしかない。
苦労して仕上がったこの下地(原板)の深さ0.2ミリから0.3ミリ程度の孔に漆黒の闇と豊かな階調とマチエールが潜んでいると思うと特別な名で呼びたくなる。


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