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マニエリスムの時代

マンネリズムという不名誉な名で永くルネサンスの模倣の時代として評価されてこなかった1520年頃から16世紀末の美術・建築様式。「創造性を失った芸術」と言われたそうで、人体表現では体を無理に引き伸ばして誇張したり、不均衡な構図や派手な色使いなどルネサンスの理想とは縁遠い物として遠ざけられていた時代。

この否定的な評価が今世紀の美術史家等によって再検証され、マンネリどころか「危機の時代の文化」として、ルネサンスの調和と秩序の人間賛歌から、不安と矛盾の危機的状況へと絵画が建築が人間が解体されていく歴史の特異点として蘇るのだから歴史は面白い。

人間社会の非合理性や不条理や宗教改革などが色濃く影響している当時の16世紀人に明確な批判精神があった訳ではないだろうが、その時代を反映した様々な創造物が生み出されて行った事実は、現代の我々が生きている今こそマニエリスムの時代と言っていいのかもしれない。不確実で破滅的危機(戦争・核)、人間存在の内的外的危機は16世紀の比では無いだろうからである。

もっともポスト・モダンなんて言い方もあるけど、遠い将来、今はどんな時代と呼ばれるのだろう。美術史家の歴史の「後付けの解釈」を待っている訳にはいかないでしょうけど。

 
 
 

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