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振り向けば忘却の虹父母(チチハハ)の眼差し纏(マト)い乱反射する
降臨す時の震えに住む魔物死とはそもそも未完に終わる
演ずるはカラクリ芝居世捨て人嗚呼と呟き下手より去る
沈殿すプラークの海飲み込んで告げられし名を生きる他なし
知人の死ネットの隅で知らされる無力と怒り押し潰されて
探し出す在るはずも無い純白に染めた記憶に寄り添う天使
写真とは瞬時に替わる昼と夜眼差しを持つ抜け殻のこと
膝抱え軒下に差す月明かり誰の便りか手紙に見えて
生れ堕ち軌道を外れ辺境の視界の地平浮遊する繭
遠去かる昨日も今日も秒速で止どめる姿人影に似せ
願わくば告げられし死の直前に滾(タギ)る血液飲み干して逝く
もたれあい伏せたうなじに添わす指服従の蜜舐めてみせてよ
倒れ込み掴み損ねた手のかたち記憶の縁(ヘリ)に眼差しの跡
くれてやるピアスまみれの心臓は自業自得の墓碑銘を彫れ
ものごころすくい上げたる愛しさは見てきたものの残影にこそ
晩秋に何もかも落つ諦めの雫の様に天命を知る
おぼつかぬ踏み出す一歩遠去かる生まれし海は寄せては返す
響き合う水滴満つる草原で彷徨(サスライ)の時身に纏(マト)う虹
通わぬ血真白き指を切り落とす瞬時に凍る白夜の森で
寄る辺ない悔いて嘆きの上書きと剥がし損ねた辻褄合わせ

2018.8 Mezzotint考 Copper engraving        2021.7 tsui no tanka

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