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永遠に明けない夜に垣間見る子午線に住む白夜の記憶
溶け出した網膜の影振り払う受け入れ難し視界閉じる日
溶鉱炉溶かし込まれた群青の鎮圧された王国の旗
内と外漂う意識せめぎ合う抜け出た地平揺れる異次元
角膜に銀河を秘めて開闢の刹那に見えた海馬の宇宙
怖じ気づく閉じ込められた流刑地で列車の地鳴り脱出の時
左手は夜の高さに触れたまま右手を離れ行方不明に
見誤る三叉路に立つ影法師指し示す道望郷の罠
ここに居て為す術も無く見送るは流れるままの水の純情
忘れまい手のひらで舞う花びらを桜の呪文狂気と共に
降り注ぐ満天の星恐ろしや浮遊する意志次元を跨(マタ)ぐ
逝く人が道連れにする紅蓮の火浄土に燃える無念の凄み
本当にこれで終わりか幕切れの出口へ向かう見届けるため
夜明けまえ幕間に住む精霊の背後に立ちて緞帳を裂く
何故ならば握りつぶした拳の形今日も生きてる明日を見たから
永遠の時を密かに滴らせて滅びの窓に裂けた満月
独り住み呑み込むしじま虚ろいに迎え入れるは音の無い雨
必ずや再び巡る黄泉の国葬る死者に恩寵の降る
彷徨(サスライ)の迷いと逸(ハグ)れ繰り返しグラスに注ぐ呑み込む無言
失せし春迷い出(イデ)たる桜坂別れの余韻残り香の風
ベルが鳴るすっくと立ちて宙を蹴る透明の空スクリーンにして
我が想い貫き通す純情の淡き浮名にペチュニアの蜜
約束の光でできた白き人背中の翼確かめてから
のぞき見た赤色灯に照らされる揺らぐ地軸と海の絶叫
ささやきが流す涙に溶け込んでひとつの歌に百首連なる

2018.8 Mezzotint考 Copper engraving        2021.7 tsui no tanka

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